ハリウッド・リライティング・バイブル
難易度:
どんな人向けの書籍
シナリオをより一層面白くするために、ストーリーの構成、テーマ、キャラクターをどのようにしたらよいか、どこをポイントに見直したらよいかが、実際の映画「刑事ジョン・ブック/目撃者」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「アフリカの女王」などを利用しを題材に紹介されています。単に3幕構成が説明されているだけでなくサブプロットの関連なども紹介されていることから、『シナリオをもっと面白くしたい』、『シナリオを緻密に計算して深みのあるものにしたい』、『推敲する際に何をポイントにしたらよいのか知りたい』と思われている方にお勧めです。
目次紹介
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ストーリー・ストラクチャー
この章では、大きく分けて①ストーリーの構成、②サブプロット(ヒロインのストーリー)との関わり合い、③シーンの作り方、に関して紹介されています。それ以外にも、伏線やモチーフ、見直す時の注意点などが紹介されています。①ストーリー構成では、
日本だと起承転結や序破急というストーリー構成が有名ですが、ハリウッドメソッドでのストーリー構成は3幕構成です。
3幕構成の転換ポイントであるターニングポイントや中間点(ミッドポイント)の役割や、などについて紹介されています。②サブプロット(ヒロインのストーリー)との関わり合いでは、
『刑事ジョン・ブック/目撃者』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などを参考に、メインプロットとサブプロットの役割や関係性が紹介されています。③シーンの作り方では、
あまり多くの紹介はされていませんが、シーンの中での構成や手法(モンタージュや始め方など)に関して紹介されています。 -
アイデア・ディベロップメント
シナリオやテーマのアイデアを考える際にどのような観点から考えるとよいかが紹介されており、その1つとして、人間に存在している普遍的な欲求(有名なものでマズローの5段階欲求説があります)を参考にした場合の例が紹介されています。
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キャラクター・ディベロップメント
キャラクターを考える際に重要となる、目標(ゴール)、動機、行動、葛藤などをどのように考えるとよいかが紹介されています。
キャラクターに深みを与える手法として、哲学や感情的な気質や反応、成長の過程などがあります。 -
ケース・スタディ
シナリオが書き直された例として『刑事ジョン・ブック/目撃者』の紹介がされています。
内容紹介
「刑事ジョン・ブック/目撃者」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「アフリカの女王」などを利用し、シナリオのポイントを具体的にどう扱っているか紹介されているため、イメージが掴みやすかったです。やはり具体例で読みえるのはいいものですね。
シナリオの基礎技術を学んだ後に読むと、より理解しやすいと思います。
【ストーリー構成】
この書籍では、ハリウッドメソッドですので、3アクト構成になっています。日本の場合ですと、序破急とイメージして頂ければ分かりやすいかと思います。
2時間映画ですと、
- アクト1 :セットアップ + 第1ターニングポイント 約30ページ 30分ぐらい
- アクト2 :ミッド・ポイント・シーン + 第2ターニングポイント 約60ページ 60分ぐらい
- アクト3 :クライマックス + レゾリューション 約30ページ 30分ぐらい
の1:2:1が丁度良いバランスのようです。
ゲームですと、全体が長くなるため、アクト2が長くなります。
セットアップは、出だしになりますので、天地人の紹介を行う必要がありますが、それ以外にも、ストーリーの柱や方向性、カタリスト(きっかけ)、セントラル・クエスチョンを描く必要があります。
セントラル・クエスチョンとは、クライマックスで答えが導き出される問題。すなわち、観客がクライマックスまで持ち続け、答えを予想しながら楽しめる問題ということになります。また、テーマとも深く関わることになります。
クエスチョンには、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンがあります。オープンクエスチョンは様々な答えがありますが、クローズドクエスチョンは、「YES」か「NO」で答えられる問いです。
ハリウッド映画ではクローズドクエスチョン形式の方が多いようですが、日本ですと感情の変化を描いている場合が多いためオープンクエスチョンになりやすいようです。
観客が持っている予想している答えは、ストーリーが進むにつれ変化します。この変化させるポイントが、第1ターニングポイントや第2ターニングポイントになります。観客に「あれ?さっきまで答えはYESだったのに、もしかしたらNOかもしれないぞ」と思わせる事で、次のアクトに引き付ける役目があります。
クライマックスがセントラル・クエスチョンの答えであれば、レゾリューションは、余韻を観客に定着させる所です。また、クライマックスまでに出てきた未解決の問題を回収する場所になります。
これまでストーリーの構成に関してご紹介しましたが、もう一つ重要なポイントとして、メインプロットとサブプロットに関しても書籍では紹介されております。
映画では2時間という短い時間になるため、サブプロットは2~5個ぐらいになるようですが、ゲームでは、このサブプロットが数十個できるのではないかと思います。
メインプロットが、ゾンビが沢山いる街から脱出できるかどうかだったら、サブプロットは主人公とヒロインの恋愛関係などを描いたものになります。
メインプロットとサブプロットはお互いに関係が無ければなりません。書籍で紹介されている注意すべきポイントとして、
- サブプロットが構成を欠いている
- サブプロットがメインプロットと交差しない
- サブプロットが正しい場所に配置されていない
があるようです。
【キャラクターに関して】
シナリオにおけるキャラクターは、動機と行動と葛藤になります。
動機と行動には、マズローの7段階欲求説がありますが、他には欠乏状態にすることがあげられます。
書籍では紹介されておりませんが、主人公は何らかしらの欠乏状態になると、それを補うために行動を起こすことになります。詳しくは、ゲームシナリオのドラマ作法を読んで頂ければと思います。
動機となる原因は、主人公に降りかかる事件や事情などの状況であり、どんなキャラクターでも同じになりますが、行動はそのキャラクターによって変わってきます。
行動が変わる要因として、
- 哲学/態度
- 感情的気質/感情的反応
があるため、これらを考えておく事でキャラクターに深みがでてきます。
映画にしろドラマにしろ、人物の感情の変化が重要になってきますが、感情が変化する要因として、葛藤(コンフリクト)があります。
人間は葛藤し悩む事で成長するわけですね。
この葛藤には、
- 内的葛藤
- 相対的葛藤
- 社会的葛藤
- 状況的葛藤
- 絶対的葛藤
があります。
書籍では、章ごとにまとめが表記されており、チェックすべきポイントが分かりやすく紹介されています。
また、ストーリー構成のところも文章だけだと分かりにくいかもしれませんが、書籍ではグラフで書かれていたり、表になっていますので、分かりやすくなっています。
考えるポイントが多すぎて、シナリオを書いている最中には置き去りになってしまいますが、見直す時には活用できるポイントが沢山記載されています。
もう絶版になっているため、中古でしか買えないかもしれませんが、お薦めです。